FAQ
【質問】問題社員に困っている。解雇、あるいは、辞めさせたいと思っている。どんなことに注意すればいい?
ある従業員(正社員)は、「お客様からの苦情」が絶えず、上長が「口頭指導」を繰り返しても、是正しようとしない。また、上長の「指示に逆らう」こともある。いっそのこと解雇したいが、どんなことに注意すればいいですか。
今の段階で解雇すると、リスクが高いのでお勧めできません。
訴訟になると、解雇は「よほどの事情」がない限り無効と判断されます。裁判官は、「改善させる機会を与えましたか?」、「その具体的な証拠はありますか?」と聞いてきます。そして、会社が解雇事案の裁判で負けてしまうと、①対象社員が復職する、②紛争期間中の賃金を支払わなければならない(無効な解雇だったから賃金を支払え)、③レピュテーションリスク(SNSでの悪い評判の拡散、それによる採用困難)というリスクがあります。
ではどうするか。まず、記録に残す形で、明確な業務指示を出します。「指示」であるのか、「断れるお願い」であるのかが判然としない内容の“連絡”が多いので、「指示」には注意します。その際、具体的に、何を、いつまでに行うかを明確にします。今回は、口頭指導を繰り返しているようなので、書面、メール等の文字の記録に残る形で行うことが重要です。
「日報」を書くよう指導するのも、有効な考え方です。いじめととられないよう、あくまで本人の能力向上のために書いてもらうという、スタンスを崩さないようにします。また、褒められるところは、褒めてください。社員を「承認」することは、とても大切なことです。
その際、対応が面倒なので、仕事を割り振らないという手法をとるのは止めてください。“過小な要求”というパワハラの類型に該当する可能性あります。また、本人は楽をしてお金をもらえる状況になり、改善の意欲も、退職する気もなくなってしまいます。
逆に、業務量が多すぎると、“過大な要求”というパワハラの類型に該当する可能性が出てきます。どのような指示をして、仕事をさせるかを判断するにあたっては、他の社員がこなしている業務も参照して決定します。業務量の把握は、後で未払い残業代請求の可能性もあるため重要です。
明確な指示、文書指導をしても、是正がされないようであれば、弁明の機会を与えた上で、懲戒処分を行います。最初の処分は、比較的軽めの処分(けん責、戒告)から行い、徐々に重くしていきます。なお、懲戒処分をするには就業規則の規定が必要ですので、就業規則を確認します。
あわせて、退職勧奨を提案するのがよいです。退職勧奨は、雇用契約を「合意」で解消することのお誘いです。「合意」が成立した場合には、退職の効力が生じるが解雇権濫用法理の適用はなくなります。つまり、正しく退職勧奨を行えば、紛争リスク、無効リスク、レピュテーションリスクを回避でき、雇用契約解消の結果を得られます。
退職勧奨を実施する際の注意点は、次のとおりです。
・退職勧奨を行う理由、退職勧奨に応じる条件(金銭等)を端的に伝えます。
その場合の金銭は、解雇紛争を避けるための手切れ金の扱いです。
・仕事の話など、無用な議論は行いません。
・30分間(長くても1時間)でやりきります。
・会社側は、2名で対応するのがよいです。
1名だと揉めた時に、とりなす者がいません。
多すぎると、退職しろと圧力を受けたと言われかねません。
・必ず録音します。社員の承諾を得ます。社員が録音してもOKといいます。
後で、「解雇と言われた」というトラブルが生じた時の対策です。
・回答日を、具体的に設定します。
回答日は、家族と相談できるよう、休日を1回挟むように設定します。
「この条件に応じられる場合は、○月○日までにご回答ください。
この日以降は、提示した条件は維持できなくなりますので、
あらかじめご了承ください。」などと話しておきます。(書面がよいです。)
・退職勧奨に応じる場合の合意書を交付します。
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