FAQ
【質問】社員から未払い残業代を支払ってほしいとの相談を受けましたが、どのように対応するとよいですか?
社員から、給与明細書で残業代を計算してみたら、サービス残業があって、残業した時間の一部しか、残業代(割増賃金)が支払われていないとの相談を受けました。調査をしたら、未払い残業代がありそうだとの結論になったのですが、どのように対応したらよいですか。
社員が未払い残業代を支払ってほしいと言ってきたら、その社員は、既に証拠となる資料を収集していると考えた方がよいです。つまり、自身の給与明細書はもちろんのこと、タイムカードなどの労働時間が記録されている資料のコピー、就業規則で割増賃金が書かれているページのコピーを収集しているはずです。
会社としては、絶対に放置してはいけません。誠実に対応しましょう。
もし、放置しておくと、労働基準監督署への通報、社員が依頼した弁護士からの内容証明郵便が郵送されるということになりかねません。
すぐに、会社も確認作業を始めます。タイムカードなど労働時間の実態が正しく記録されている資料で、再度、時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数を集計します。次に、1時間当たりの賃金額を計算(計算例は参考のとおり)します。1時間当たりの賃金額を求めたら、その金額に、就業規則に書かれている割増賃金率と、該当する時間数をかけて、割増賃金を算出します。
再度計算した割増賃金と給与明細の割増賃金額を比較して、会社側として未払いになっている残業代を明らかにします。
その後、会社と社員が話し合いをして、社員が主張している未払い残業代と、会社が計算した未払い残業代を比較して、支払うべき未払い残業代を確定していきます。
なお、未払い残業代の消滅時効は、労働基準法により当面の間、3年とされています。
(参考)1時間当たりの賃金額の計算例
(基本給+役付手当+技能・資格手当+精勤手当)÷ 1か月の平均所定労働時間数
なお、厚生労働省のモデル就業規則(令和5年7月改定版)の解説には、次のとおり書かれています。(一部修正あり。)
1 「法定労働時間」を超えて労働させた場合には2割5分以上、法定休日(週1回又は4週4日)に労働させた場合には3割5分以上、深夜(午後10時から午前5時までの間)に労働させた場合には2割5分以上の割増率で計算した割増賃金をそれぞれ支払わなければなりません(労基法第37条第1項、第4項)。
なお、時間外労働が深夜に及んだ場合には5割以上、休日労働が深夜に及んだ場合には6割以上の割増率で計算した割増賃金をそれぞれ支払わなければなりません。
2 会社の定める「所定労働時間」が「法定労働時間」よりも短い場合、「所定労働時間」を超えて「法定労働時間」に達するまでの時間分については、割増賃金を支払う契約(就業規則)となっていない限り、通常の労働時間の賃金を支払えばよい。
3 月給制の場合の割増賃金の計算の基礎となる1時間当たりの賃金は、基本給と手当(例の場合、役付手当、技能・資格手当及び精勤手当が該当します。家族手当や通勤手当等割増賃金の算定基礎から除外することができる手当は除きます。)の合計を、1か月における「所定労働時間」数(ただし、月によって「所定労働時間」数が異なる場合には、1年間における1か月の平均「所定労働時間」数)で除して算出します。また、時間給の場合は、時間額が1時間当たりの賃金となります(労基則第19条)。
4 割増賃金の算定基礎から除外することができる賃金には、家族手当や通勤手当のほか、別居手当、子女教育手当、住宅手当、退職金等臨時に支払われた賃金、賞与等1か月を超える期間ごとに支払われる賃金があります(労基法第37条第5項、同法施行規則第21条)が、これらの手当を除外するに当たっては、単に名称によるのでなく、その実質によって判断しなければなりません。
5 労基法第41条第2号に定める「監督又は管理の地位にある者」(以下「管理監督者」といいます。)については、同条によって労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しないとされている一方、深夜労働に関する規定の適用は排除されていません。このため、時間外労働又は休日労働の割増賃金の支払の問題は生じませんが、深夜労働については割増賃金を支払わなければなりません。
6 月60時間を超える時間外労働については、割増賃金率は5割以上とされています。ただし、中小企業については、令和5年3月31日までの間、引上げが猶予され、月60時間を超える時間外労働の部分についても2割5分以上とされています。
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