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年次有給休暇の“5日”時季指定とは?
2023/06/07
愛知県知多地域、西三河碧海地域、名古屋市南部地域を営業区域としています、社会保険労務士の岡戸久敏と申します。
平成31年(2019年)4月から、中小企業を含むすべての企業において、年10日以上の年次有給休暇(以下「年休」という。)が付与されるすべての労働者(管理監督署を含む。)に対して、年休の日数のうち“5日”については、使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。
これは働き方改革関連法の一つで、労働基準法が改正されて、この制度が新たに創設されました。この規定に違反して、年“5日”の年休を取得させなかった場合、30万円以下の罰金という罰則まで付けられています。
使用者の時季指定による“5日”の年休取得が導入された理由としては、次のようなことが考えられます。
以前は、日本人の年休取得率が、他の先進国と比べて極端に低かったという事実があります。(厚生労働省の資料によれば、2017年の取得率は51.1%です。ヨーロッパ諸国は、ほぼ100%と言われています。)
ところで、年休は、働く方の心身のリフレッシュを図ることも目的としています。原則として、労働者が請求する時季にとれることになっています。しかし、同僚への気兼ねや、仕事の遅れなどを懸念して、年休を請求することへのためらいがでてきます。そうだと思います。ですから、年休の取得促進が課題となっていました。
個人的な見解ですので、極端な言い方になってしまいますが、年休を取らなくても、心身の健康が保たれ、常にハイパフォーマンスな状態で仕事ができれば、その人自身は問題ないとは思います。(家族サービスの面では問題ありですが。)
でも、仕事をしていると、書類・資料作成で時間がとられ、会社内の人間関係で悩み、お客様とのやり取りで悩み、そして、ノルマを達成するために悩みといろいろあり、自分自身で注意していないと、長時間残業や休日出勤をして疲弊していってしまいます。
やらなければならないことが有りすぎて、仕事をし続けた結果、睡眠が十分取れず疲れがたまってきてしまい、パフォーマンスがどんどん落ちてきます。そして、気分がすぐれない日々が続き、メンタル不調が起き、最悪、脳心臓疾患になってしまって倒れる、自ら命を絶ってしまうというような不幸が起きてしまったら、本当に残念です。
ですから、年休をとって、心身共に健康で仕事をしていければ、労働者本人も、家族も、会社も、取引先も、すべてのステークホルダーが幸せになれます。
このような背景から、使用者の時季指定による“5日”の年休取得が法律で義務付けられたと思います。
そのような中、厚生労働省がまとめた令和3年労働基準監督年報によれば、年“5日”の年休の時季指定を法律どおりに行わなかった事業所が、前年(令和2年)の3倍近くになったとのことです。(労働新聞(令和5年6月5日号)参照)
ただただ、残念に思います。
会社には様々な事情があったのだとは思いますが、労働者には年休をとってもらって、皆が明るく元気で仕事ができるよう、工夫していきましょう。そうすることが、会社の業績アップ、維持・発展にもつながると信じています。
年休の“5日”時季指定の詳細は、厚生労働省のホームページを参照してください。(000463186.pdf (mhlw.go.jp))
よろしければ、私のホームページもご覧ください。(愛知県知多・碧海・名古屋市南部の社会保険労務士 – おかど社会保険労務士事務所 (sr-hokado.jp) )
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