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自腹買い取り営業に網 パワハラ認定を検討

2023/11/16

 愛知県知多地域、西三河碧海地域、名古屋市南部地域を営業区域としています、中小企業応援社労士(経営労務プロデューサー、特定社会保険労務士)の岡戸久敏と申します。(西三河・知多の特定社会保険労務士 – おかど社会保険労務士事務所 (sr-hokado.jp)

 私は、信頼をつなぐ「就業規則」と、実体験に基づく「セミナー」で、中小企業を応援しています。

 さて、2023年11月16日の日本経済新聞朝刊に、いわゆる自腹買い取り営業について、パワハラとする検討が始まったとの記事がありました。

 自腹買い取り営業とは、ノルマが達成できず、売れ残った製品をその社員に買わせるということを言います。このようなことが行われているような話は、以前聞いたことがあります。この行為が政府で議論に上がるということは、現在も行われているということなんでしょう。

 この「自爆買取営業」行為が、法律で定義されている「パワハラ」に該当するのかを検討しなければなりません。私なりに考えてみますと、次のとおりかと思います。(あくまで、参考してください。)

 ところで、パワハラの定義は、

 職場において行われる

  ① 優越的な関係を背景とした言動であって、

  ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、

  ③ 雇用する労働者の就業環境が害されるものであり、

 ①から③までのすべての要素を満たすもの (労働施策総合推進法第30条の2第1項)

とされています。

 そこで、まず、①を検討します。

 買い取りを求めてくる者は、会社の「使用者」、「上司」と考えるのが一般的です。

 自ら進んで、「労働者」が自腹で買い取りをするとは思えません。

 したがって、①は概要すると考えられそうです。

 次に、②を検討します。

 ②は、社会通念に照らし、業務上の必要性が明らかにない言動、または、その態様が相当ではないものとされています。

 そして、その判定は、言動の目的、言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、言動の態様・頻度、継続性、労働者の属性や心身の状況、行為者との関係などを総合的に考慮するとされています。

 売上を上げるという目的、売上を上げるのは業務上必要だけれども、「労働者」に自腹で売れ残りの商品を買わせるのは、業務を遂行するための手段としては不適当でしょう。その他の検討をして、政府が判定していくものと思います。

 次の③ですが、

 平均的な労働者の感じ方を基準とします。

 平均的な労働者の感じ方とは、同様の状況で、同様の言動を受けた場合に、社会一般の労働者が看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動があるかです。

 必要ではない物を買えば、それだけ金銭的に生活への支障が生じると、平均的な労働者は感じるでしょうから、③も、該当しそうです。

 なお、厚生労働省が整理した「パワハラ行為6類型」には、当てはまるものはありません。

 (パワハラ行為6類型の説明は、省略します。)

 今後の政府の議論の行方を、注視したいと思います。

(参考)2023年11月16日 日経電子版

 政府の規制改革推進会議の作業部会は15日、ノルマの未達時に自腹で商品やサービスを買い取る「自爆営業」の規制に向けた議論を始めた。幅広い業界で慣習となっていることを踏まえ、法律上のパワーハラスメントと位置づけるなど対策を検討する。

 自爆営業はノルマを達成できない社員に自腹で契約を結ばせたり、半強制的に商品や賞味期限が近づいた食品などを買い取らせたりする行為だ。

 勝手に給与天引きすることなどは既に労働基準法が禁じるが、包括的な規制はまだない。パワハラ防止法でも自爆営業に関する明確な位置づけはない。

 15日の議論では、専門家が「自爆営業は労働者の『契約の自由』を侵害し、公序良俗に反する可能性が高い」(早稲田大の島田陽一名誉教授)と指摘した。

 作業部会ではまず現状のパワハラ防止法や労働基準法で対処できる事例を整理する。そのうえで自爆営業を「パワハラ」と明確に位置づけたり、労基法を改正して取り締まり対象にしたりする方向で検討する。

 自爆営業で収益をかさ上げしているような業種から、生産性が高く成長が見込める業種に人材が移るようにする狙いもある。金融などの法律を所管する省庁は、取引の健全性確保を業界や企業に求めるが、労働者保護はカバーされていない。議論で厚生労働省は「業種ごとに何がアウトかを明確にする必要もある」と指摘した。

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