BLOG
自衛隊のハラスメント
2023/08/21
愛知県知多地域、西三河碧海地域、名古屋市南部地域を営業区域としています、
特定社会保険労務士の岡戸久敏と申します。(西三河・知多の特定社会保険労務士 – おかど社会保険労務士事務所 (sr-hokado.jp))
2023年8月19日(土)の日本経済新聞朝刊に、「自衛隊ハラスメント1325件」という記事が掲載されました。この事件は、少し前から各メディアで大きく取り上げられており、注視していました。
自衛隊の皆様は、私たち国民のために国防を担っていただき、又、災害時には迅速に人命救助、災害復旧をしていただき、いつも感謝しています。
例えば、東日本大震災の際、災害復旧のお手伝いで宮城県に行きましたが、自衛隊の方に設営していただいたお風呂に入れていただきました。心身ともに温まり、感謝しました。
また、もっと前の出来事ですが、東海豪雨の際、私は、名古屋市内の天白川の土手の上から見ていたのですが、浸水でマンションに取り残された住民をボートで助け出していらっしゃいました。
こういった大変な業務を何も言わず、淡々とされている姿は素晴らしいです。
しかるに、今回のハラスメント事件です。第一報は、NHKのテレビで見ましたが、衝撃を受けました。残念です。
同時に、組織に隠されていた嫌な事実を公表された、元自衛官の女性の方の勇気は立派だと思います。いろいろな誹謗中傷も受けたと推察します。大変だったと思います。
どんな職業であっても、性別を問わず、肉体的精神的状況を問わず、その人が働きがいをもって働ける社会になってほしいと願っています。
さて、新聞記事によりますと、パワハラやセクハラを受けたとの申し出が1325件あったとのことです。記事には母数が示されていませんので、比率はわかりません。ただ、そのうちの850件(約64%)が、内部の相談員や窓口を活用しなかったとのことです。つまり、法律で設置が義務付けられている相談機関を設置したけれども、機能していなかったということです。
相談機関を利用しなかった主な理由は、相談するとかえって不利益を受けるとの懸念、そもそも相談できないということです。また、相談していた400件でも、人事上の不利益を受けるとの示唆を受けたことや、相談したことが加害者に知られたとのことです。
あきれ返るくらいひどく、典型的な、ハラスメント対応してやってはいけないことのオンパレードです
監察結果はハラスメントは起きるとの前提で、被害の初期から厳正対処するとの原則を確立する必要があると指摘しているそうです。これはよしと思います。
ただ、ハラスメントは起きてしまいますと被害者の心が傷つきますので、まずは絶対に起こさないという体制づくりが大切です。何度も研修を行い意識改革を続けることや、全職員への相談機関の周知を、徹底的にやってほしいと思います。
研修は、外部の方で、自衛隊に遠慮なくものが言える方にお願いした方が、研修効果は上がると思います。
それでも、ハラスメントが起きてしまった時は、迅速かつ慎重な対応が必要ですので、上記の観察結果のとおりです。
また、被害者・加害者双方への、事後の配慮、対処についても、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。
もう一つ、新聞記事には、自衛隊は組織を「家族」に例える傾向が強いと書かれていました。これは、いいと思います。ただ、そのあとに、「家族だからハラスメントは許される」との認識になると書かれていましたが、意味が分かりません。
自分の家族にハラスメントをするのですか、また、自分の家族がハラスメントを受けたら、どのように感じるのですか。家族は、あなたの所有物ではありません。個々の人間です。ハラスメントを起こした方は、もう一度、心の底からよく考えてみるとよいと思います。
更に、これが一番大切なことですが、「防衛大臣がメッセージを定期的に発信し、組織の姿勢を明確化すべき」と書かれていました。トップのハラスメントは許さないという強い気持ち、姿勢を、本気で打ち出してほしいと思います。そうすれば、自衛隊員の方は立派な方ばかりですから、皆さん気づきます。防衛大臣だけでなく、統合幕僚長も現場の最高責任者として、同様のことをやってほしいです。
自衛隊の方々が日々、私たち国民のために国防や災害復旧などに、無私の心で取り組んでいただいており、ありがとうございますという気持ちには変わりません。
ハラスメントが契機となって国民の信頼感を失うことのないよう、よろしくお願いいたします。
(参考)日経電子版
2023年8月19日 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO73724710Y3A810C2CM0000/
(有料会員でないと、一部しか読むことはできません。)
Copyright © おかど社会保険労務士事務所